2013年4月 「死ぬときは桜の季節にしてね。寒くもなく、暑くもなく映画のように桜の花びらがはらはら散る天気のいい日にね。」 生前ママはいつも藤沢じいちゃんとばあちゃんに言っていた。 ママのいうことを藤沢じいちゃんは守ったのだろうか? そんなことを言わなければ良かった。 桜満開の青い空の中おじいちゃんはお空にまっすぐに向かっていった。 最後まで人間としてのプライドを保ちたかったのだろう。 自分の足で病院に行き、トイレにも行き、パパには「迷惑かけるなあ。」と言った。 ママには「遅くなるから早く帰れ。」と。 それが聞き取れた最後の言葉でおばあちゃんや弟、義妹に見守られ、最後まで心配をかけていた娘にほほを撫でられながら静かに逝った。 こんなにあっけなく逝ってしまう人だとは思わなかった。100歳まで生きると頑張っていたのに。 来月と10月には孫達の結婚式もあったのに。 大好きな大好きなおじいちゃんが亡くなった日、ママはどうしてもAちゃんのお墓参りにいかなければならなかった。 おじいちゃんの顔をみて、髪をなでて、ひげを剃って・・・ おじいちゃんに問いかける。 「私はどうしたらいい?」 おじいちゃんは何も言わなかったけれどみんなのお世話をしてちゃんと用事をすましてお出でと思っているに違いない。 おじいちゃんはそういう人だ。 だから大学時代のみんなと予定通り楽しい時間を過ごしてきた。 気を緩めると涙が止まらないのでじっと我慢しながら歩いていた。 みんなも気を遣っておじいちゃんのところへ行くようにいってくれたけれど行けばおじいちゃんがいなくなったことを認めなければいけないという思いがあって怖くて帰ることもできなかった。 彼らが側にいてくれてとても頼もしかった。 それがなければずっとおじいちゃんの側で後悔ばかりしながら泣いていたと思う。 みんなと別れて大急ぎで藤沢に向かった。 今まで我慢してきた涙が止まらない。 またおじいちゃんのほほを触ってみる。 がんばったな。とほほえんだ気がした。 |