目の前が海

2012年4月

 今年晴れて社会人になった甥の赴任先は宮古だった。
藤沢ばあちゃんは心配でたまらない。
また津波がきたらどうしょう。
住まいは?

本来なら母親が心配するものを頼まれもしないのに一人で騒いでいる。

車も必要だから・・と本人、親に言う前に買ってしまったようだ。(まあ、よかったんだろうけれど。)
とにかく甥に入れ込む気持ちはハンパではない。

もっともママがお兄ちゃんに注ぐ愛情も同じ位らしい。

それは良いとして・・・・

甥が言うには住まいは津波で一階が水についた住宅の二階。
社会人の悲しいところはそんなことも我慢しなければならないところだ。

赴任先が決まって一人で行ってみたらしい。

防波堤も家もなにもなくなった場所は海の目の前だそうだ。
「なんか、はじめてぞっとした。」
挨拶に来てそう話していた。

ちょっと見に行くのと、暮らすのではずいぶんちがうこともあるだろう。

防波堤がない場所は小さな津波でもやられてしまう。

地震が来るたびみんなびくびくの生活をしているそうだ。

「津波、てんでんこ。」っていうんだからとにかく自分を守りなさいね。
そういって送り出した。

夜、地震がくるたびに甥の事を思う。

藤沢ばあちゃんは心配で寝込んでしまうのではないか?と娘も余計な心配をしている。