毛糸玉

2007年12月

 秋も深まってRちゃんの具合が悪くなりリビングから動けなくなった頃,Rちゃんママからこんなメールが届いた。
一日中リビングでRと一緒なので毛糸を始めました。
Rちゃんママはお料理も上手だし編み物も上手だからうまく時間をつぶしてるんだろうなぁくらいにしか思わなかった。後でおしゃべりしていたときにその話になった。今の時代手編みのセーターなんてあげるのももらうのもなしに近いそうである。編み物事態がほとんどなくなって毛糸屋さんも商売廃業に追い込まれているそうだ。ママ達が若い頃はクリスマスの時期になれば手編みのマフラーだ、手袋だと騒いでいた。お金がなくてウール100%の毛糸が買えずにせっかく苦労して作ってもすぐ毛玉だらけになって(あ〜あいい毛糸で編んであげたいなあ・・)なんて思ったものだったし、二人の娘達のマフラー作りにも随分貢献した気がする。
そう思って本屋さんを見て回っても編み物の本なんて数えるほどしかなかった。
時代って変わってるんだなあ・・なんて遅ればせながらしみじみ思ってしまった。
退院してからも毎日がめまぐるしく、新聞すら読めない毎日が続いていたのに今日になってぽっかりと時間ができてしまった。
おひさまがさんさんとはいってくるリビングでぷりんとりゅう君はくっついて寝ている。
ママも編み物でもしてみようか・・・納戸にはまだたくさん毛糸が残っていた。
その中から一つを取り出し数年ぶりに針を持った。
若いときに覚えたものは忘れないものらしく眼鏡が老眼鏡になったことを除けば数年前に若返りしたママがそこにいた。
ぷりんがまだまだ若くて元気で毛糸なんてだせばもう大騒ぎになって・・・そこからまた少し大人になってぷりんと一緒に自分の時間も楽しめるようになってたくさんの、様々な思い出を編み込んできた日々。

でも、なんのいたずらもせずにわんこがリビングから動けない状態にあるなんてとても悲しい、寂しいことだ。
すぐに考えつけばいいものをここまできてやっとそのことに気づいた。
Rちゃんママはどんな気持ちで、泣きたいのを我慢しながら、一日が幸せに終わることを必死で祈りながら毛糸と格闘していたに違いない。
そんな気持ちもわかってやれず自分が退院したことに浮かれすぎていたなあ・・なんて思ってしまったのが失敗だったのか、3段目まで編んだところでそのセーターは手つかず状態になってしまった。