親不幸

2007年10月

 さて、どうしたものだろう?
ママの入院を藤沢じいちゃんに伝えたくない。
夏にも体調を崩して入院した藤沢じいちゃんにママの事を話したらとても心配するだろう。
少し前なら車を運転して顔を見にきたかもしれないけれど今ではバスを乗り継ぐしかない。
動作もゆっくりでみていても危ないのに(本人は全然自覚がないけれど。)バスにのってやってくる姿も見たくない。
ばあちゃんは相変わらず元気で「大丈夫、すぐ治るからね。まぁそのうち行ってみるから・・」の恒例入院ののりである。
色々考えて、「やっぱりおじいちゃんには内緒にしてね。」っていったのにおばあちゃんは内緒話なんて出来る人じゃなかった!!!
そんなこんながあって入院も半ばを過ぎた頃おじいちゃんがお見舞いにやってきた。
自分が入院したときは毎日きてもらったのに娘のお見舞いにこれないのはとても心苦しかったそうである。
耳も遠いからママとおばあちゃんの話も半分くらいしかわからなかったろうに病院にいる間ずっとにこにことママの顔ばかり見ていた。
いまだかってこんなに見つめられたことがあっただろうか???
それくらいママの顔ばかり見ていた。
目と目があうとママのほうが泣きたくなってくる。
「大丈夫だよ、たいしたことないから。すぐに退院だから心配しないでね。」
バス停まで送りながらおじいちゃんと腕を組んで歩いた。
「俺の後始末は全部おまえがするって約束してただろ?親より先には絶対行くな。そんな親不孝だけは絶対するな。」
おじいちゃんがぼそっと言った。
「わかってるから、任せなさい!!!」
絶対こんな親不孝はしない。
これはママだけではなく子ども達にも願うことだ。

おじいちゃんとさよならしてエレベーターの中、声をあげて泣いた。